彼は、理想の tall man~first season~
「はぁ? お前、バカかよ」
「え、なに――そんなに怒らなくても」
それにまだ話の途中なのに、晃は何故かキレ始めた。
「美紗は、昔から隙がないようで隙のある女だよな」
「なに、いきなり?」
「心配してやってんだよ」
「全然そんな風に思えないし、寧ろバカにしてるでしょ?」
「まぁ、否定はしねぇけど」
「はぁ? なんなの?」
「無事だったから良かったようなもんで、なにかあってからじゃ遅いんだから、気を付けろよな?」
「――う、うん、ごめん」
本当にそれはそうだから、ごめんと謝るしかないんだけど。
「まぁ、反省はしてるみたいだし、今日はもう遅いから、帰って休め――な?」
そう言って、部屋まで送ると言ってくれた晃の優しさに救われた私は、マンションのエントラスに向かって歩き始めた。
「ねぇ、普段、帰りって、いつも遅いの?」
「ん? まぁ、早い日もあるけど、大抵遅いな」
「忙しいんだ?」
「そうでもねぇけど、会社の雰囲気に合わせてる部分もある」
「それって、仕事終わってても残ってるってこと?」
「まあ、その日やらなくてもいい仕事をしてる時もある」