彼は、理想の tall man~first season~
あまりにもサラッと放たれた言葉だった。
けど、心臓が抉られたような鈍痛が走った。
「お前さぁ、本気で好きなんだろ?」
「それは――」
「迷うな、んで、今更俺に遠慮なんかすんな」
「うん――でも、本気って、なんなんだろうね」
「あ?」
「本気で好きって、どういうのが本気で好きなんだろうなって思って」
目的の階に着いても、話していた私と晃。
「それは、誰もがそうだって定義はねぇよ」
箱の中の天井を仰ぎ見ながら、晃はそう呟き。
その言葉に、妙な居心地の悪さを感じて――私は箱を降りた。
「もうここまででいいよ、本当に今日はありがとう」
「ん、あと数メートル気を付けて帰れよ」
「うん、おやすみ」
――誰もがそうだって定義はない、か。
好きなら、交際相手がいる人でも奪いに行く人もいれば、好きだけど身を引く人もいて。
会いたければストレートに会いたいと言う人もいれば、会いたくてもそれを口には出せない人もいる。
傍から見たら、それって本気なのか疑わしいことかも知れないけど。
本人にしたら、精一杯ってこともあって。
家のドアの前に着くまでの間、そう考えていた私は――いきなり玄関のドアが開いたことに、面食らっていた。