彼は、理想の tall man~first season~
chapter.31
「平日なのに、結構飲んじゃったかな」
「たまにはいいんじゃない?」
夜道を歩きながら、敦君はフッと笑った。
だけど、
「キャッ――」
突然私の体をグッと自分の方に引き寄せた。
突然のことに、一瞬わけがわからなくなり、心臓がバクバクし始め。
居酒屋で会計時にもらったクールミントのガムを、飲みこみそうになってしまった。
そんな事態の中、自転車が通り過ぎて行ったから、危ないから取ってくれた行動であったと、私は今の状況を理解した。
でも、自転車が過ぎ去っても、離れ難くて――トンと、頭を敦君の内肩に預けてしまった。
「っ、と――大丈夫?」
私が予想外の行動に出たからなのか?
敦君は一瞬半歩後ろに退いたけれど、直ぐに支えてくれて。
「気分悪い?」
言われたことに軽く首を横に振りながら、私はそっと離れた。
もう少し一緒にいたい――そんな気分に支配される。
だけど、もう結構いい時間で、明日も仕事だから帰らないと。
このつめられそうで、つめられない――もどかしい距離感が、切ない。
この間の雷の夜、一緒に眠ったのが遠い日のよう。