彼は、理想の tall man~first season~
「自分の気持ちに、素直になっとけば?」
「ねぇ、さっきから、本当になんなの?」
部屋から出ると、「じゃあ、敦さん、子守よろしく」とか言って、尚輝は本当にリビングを出て行った。
なにが子守よ、バカ尚輝!!
その言葉に無性に腹が立ち。
だけど、玄関のドアの閉まる音が聞こえて、2人っきりになってしまったという現状。
怒りというものが、それによって、一気に緊張へと変わっていた。
好機逸すべからず、って。
好機なの、これ?
まぁ、中條氏は、理想通りの人で私好みの人だから、その意味では好機になるのか?
尚輝は、いい機会を取り逃すなって、言いたいんだろうけど。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
沈黙は、変に緊張を煽るから嫌だ。
「あの、煙草、吸われるんですか?」
「吸うと言えば吸うけど、普段は吸わないかな」
「は、い?」
「いや、飲むと吸いたくなるから、飲むと吸う感じ」
「あ、そう――でしたか」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「あの、これしかないですけど良かったら、どうぞ」
部屋から持って来た煙草とライターを、私はそっとローテーブルに置いた。