彼は、理想の tall man~first season~

思いを吐露出来ない性格というのは、時に厄介だ。

もどかしさを感じながら、ゆっくり歩いていると、開いていくお互いの距離。

ビジネスバッグを持つ敦君と、手を繋ぐことがないまま、足はマンションに向かっていた。


居酒屋で話は沢山出来たけど、話し方は以前のまま。

それでも日曜日に会えることを思えば、なにもないよりマシだと思える。


だけど、やっぱり何かが足りないって思うのは――なんなんだろう?

私は、敦君に頭を預けて、どうして欲しかったんだろう?


多分、それはひとつしかない。

けど、そんなこと言える勇気もなければ、行動に移すなんて、以ての外だ。


縮まっては元通りで、不安に駆られるサイクル。

これをいい加減脱出したい。

そこまで恋愛に積極的には出来ないから、結局はまたモヤモヤを日曜日まで抱えるんだろう。

彼氏でも、知り合いの域から脱するには――。

でも、今更馴れ馴れしく話すのも本当に無理で。

これ以上の進展なんて望めないのかとさえ思えて来た。


敦君は、この関係を――どう思っているんだろう。

このままでいいって、思っているのかな。
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