彼は、理想の tall man~first season~
しかも、別れ道ならまだしも、マンションまでは一緒に歩いて帰るわけで――。
「それじゃ、帰ろうか」
「――はい」
「はい、じゃなくて、うんでしょ?」
「え?」
敦君の切り返しに、今度は私が訝しい眼差しを敦君に向ける展開だった。
「ちょっと待って――俺の言った意味、理解してる?」
「したくなくても、してますから、大丈夫です」
「―――」
「―――」
本当に、なんなんだろう。
ゴメンねって言ったのは、敦君の方なのに。
私は、自分で言うのもどうかと思うけど、意外ともの解りのいい方だと思うんだけど。
「なんか、キレてる?」
「キレてないですけど」
「やっぱり、意味解ってないでしょ?」
「解ってますよ? やっぱり私とは合わないから――ゴメンてことですよね?」
別れる別れないって、そういう言葉を使うまでの関係でもなかったから。
それを使うには違和感があるから、遠回しに言ったってだけのことでしょ?
どんどん惨めに思えて来て、立ち去りたい気分。
敦君の前から姿を消したい。
そんな気分で目を逸らした。