彼は、理想の tall man~first season~

「ん? なに、この煙草」

「え?」

「いや、初めて見た箱だから」

「去年辺りに発売した煙草、ですけど?」

「ああ、通りで」

「はい?」


ここ1年、日本にいなかったからと――中條氏は、そうのたまった。

名刺に海外事業部って書いてあったのは、それでなんだ。


先週半ばに日本に戻って来たばっかりで、と。

はぁ、そうですか――ってな話の展開で。

私の勧めた煙草を中條氏は吸い、私もやけくそ状態だったので吸ってみた。


「いつから吸ってるの?」

「え――私、ですか?」

「うん」

「私は、中2の終わり頃に」

「っ、え? 中2って? 中2って早くない?」

「そう・・・・・・ですか? でも、なんかあの当時は、色々と必死で」


成長が止まるかと思って――と、恥ずかしい過去の思考をさらしてみた。


健康を害すると言われ続けている煙草。

成長の妨げになるという事が、中学の仲間内では、成長が止まるという話となり。

実際ピタリと止まるなんて思ってもなかったけど――ただ、それにすがりたいくらいの状況だったんだ。


中2になって吸い始めた尚輝の煙草を、冬にこっそり――というのが吸い始めのキッカケだった。
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