彼は、理想の tall man~first season~
「なあ、なーんか、俺、軽く見てみたいかも」
「――は?」
「トイレついでに、チラ見してくるとするかな」
各テーブルの通路側には、仕切りの役目の衝立板があり。
テーブルとテーブルの間――つまりは、客の背と背の間が、ロールカーテンによって仕切られている、簡易仕切りこの上なしの居酒屋。
壁とドアで完全に仕切られている訳でもないから、席から立てばロールカーテンの隙間から、確かに隣り近所の席が見えるには見えるが・・・・・・。
悪趣味なヤツだと思っていると小川は席を立った。
俺は暇で煙草に手を伸ばした。
『――お君と一緒に、やったらいいのに~超話題になりそうじゃん』
『えー、絶対無理。あいつだって腰掛けだよ? 本人は真面目に社会人やる気でいるみたいだけどさ、ちゃんとなれるか心配しちゃう』
『いいじゃん、いいじゃん! スーツ姿見てみたいわ』
男と別れたばかりだというのに、違う男の名前が登場。
女の考えていることは、理解に苦しむと思いながら、煙草の煙を――肺から吐き出した。