彼は、理想の tall man~first season~
だけど、その話は私には適応されることなく、この有様で。
今ではすっかり愛煙家というオチだ。
「中2で既に166あったので、どうにか成長が止まらないかと思ってたんです」
「そうだったんだ」
「あの頃は、牛乳すら飲まなかったんですよ。伸びてく身長を止めたくて」
恥じらいを捨ててそう言った私に、中條氏は、「女の子だね」と、少し頬を緩ませた。
そして、
「俺から見たら、小さくて可愛いけどね」
――と。
ここ数年で、感じたことのない種類のドキドキを、私にプレゼントしてくれた。
ま、冗談なんだろうけど。
嘘でも嬉しいと思った。
ただ、この人の身長なら、それは嘘ではないのかも――とか。
本音処は、僅かでもいい。
その言葉をどこか信じたい気持ちで、私の稀少な乙女心はどこか舞い上がったんだ。
だけど、私をどこか舞い上がらせた張本人は――
「帰国してから会社で飲み会があったんだけど、その時、尚輝がボヤいてたんだよね」
突然そんな話をして来た。
そう言えば先週末、飲み会だかなんだかで、尚輝の帰りは遅かった事を、思い出す。
「なんて、ですか?」
「尚輝の言葉そのままに言うけど――妹が、枯れてるって」