彼は、理想の tall man~first season~

「これ、うまっ!」

「んー、この煮魚も美味しい」


懐かしい母の味付けに、尚輝も私も食がすすむ。


「ねぇ、ちゃんと毎日朝食作って食べてるの?」

「お母さんみたいにこういう種類豊富で色とりどりな朝食は無理だけど、それなりには作って食べてるよ? お弁当も作って持ってってるし」

「俺は完全に美紗任せ」

「美紗、尚輝の分のお弁当も作ってるの?」

「うん」

「そう――ちゃんと自炊しているならいいけど」

「夕飯はバラバラな日もあるけどねぇ。あ! 私、ご飯おかわりしてもいい?」

「勿論、しっかり食べて行きなさい」

「美紗、俺もおかわり」

「はーい」


食事中は口数の少ない父に対して、母は良く喋る。

3人の会話をお父さんは楽しそうに聞いていて。

懐かしい実家の食卓と食事に、私のお腹はこれでもかというくらいに、満たされた。


食後にお茶を飲み、出掛ける時間を尚輝と協議。

その時間まで、私はピアノが置かれている部屋で、練習に励んだ。


「美紗、そろそろ支度しろよ」

「あと1回弾いたら支度する」


私を呼びに来た尚輝は、部屋を出て行くことはなく、ピアノ脇に立ち、黙って弾き終えるまで聴いていた。
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