彼は、理想の tall man~first season~
「順調か?」
「んー、まずまずかな。でも、不安だから、あとは嬰でみっちり練習させてもらう」
「敦さんに恥かかせる訳に、いかねぇもんなぁ」
「ちょっと、変なプレッシャーかけないでよ」
「事実だろ」
まあ、確かにそれは本当にそうだ。
もし、間違いでもしたら、場の雰囲気を台無しにしかねない。
「ゴメン、やっぱりあともう1回弾いたら支度する」
「きりねぇな」
「尚輝が変なこと言うからでしょっ!」
何回弾いたって、当日弾き終えるまで、プレッシャーとの戦いだから。
今、あと1回弾いたからって、どうなる問題でもない。
けど、この帰省は――本来これを練習をする為だ。
「あと1回だぞ」
「うん、あと1回弾いたら本当に支度するから」
尚輝は納得してくれたのか、呆れたのか――部屋から出て行った。
もう一度感触を確かめながら、ゆっくり弾いて。
弾き終えた私は、部屋を移動して、支度に取りかかった。
「あっ、お母さん! 私の制服あった?」
「うん、クリーニングに出しておいたわよ」
「流石、お母さん! 帰りに持って行くから、出しておいてくれる?」