彼は、理想の tall man~first season~

もうひとつの目的も忘れず、出掛け前に母にそれを頼み。


「行ってらっしゃい」

「行ってきまーす!」


私は車に乗り込んだ。


「お父さん乗せて運転するの、いつ振りかな?」

「美紗が免許取って以来じゃないか?」

「そうだっけ――なんか緊張しちゃう」

「取りあえず、安全運転でな」

「はぁい」


父は助手席、尚輝は後部座席。

私の車で、ブランドショップが立ち並ぶ街まで向かった。


基本的に、私に甘い父。


「どうする? 洋服から見て行くか?」

「うん!」


こういう時は、存分に甘えて、普段は手の出せない値の物を買ってもらう。


父と腕を組み歩く私の後ろを、尚輝は黙って付いて来る――。


「ねぇ、こっちとこっちだったらどっちの色がいい?」

「左――だけど、それよりこっちの方が、美紗には合うんじゃねぇ?」


お会計は父任せで、元モデルの尚輝は、荷物持ち兼良きアドバイザーだったりだ。


「試着してから買えよ?」

「うん! 両方着てみる」


私が見た目で気に入ったワンピースと、尚輝が薦めたワンピース。


「やっぱりこっちの方がいいかな――」
< 707 / 807 >

この作品をシェア

pagetop