彼は、理想の tall man~first season~
もうひとつの目的も忘れず、出掛け前に母にそれを頼み。
「行ってらっしゃい」
「行ってきまーす!」
私は車に乗り込んだ。
「お父さん乗せて運転するの、いつ振りかな?」
「美紗が免許取って以来じゃないか?」
「そうだっけ――なんか緊張しちゃう」
「取りあえず、安全運転でな」
「はぁい」
父は助手席、尚輝は後部座席。
私の車で、ブランドショップが立ち並ぶ街まで向かった。
基本的に、私に甘い父。
「どうする? 洋服から見て行くか?」
「うん!」
こういう時は、存分に甘えて、普段は手の出せない値の物を買ってもらう。
父と腕を組み歩く私の後ろを、尚輝は黙って付いて来る――。
「ねぇ、こっちとこっちだったらどっちの色がいい?」
「左――だけど、それよりこっちの方が、美紗には合うんじゃねぇ?」
お会計は父任せで、元モデルの尚輝は、荷物持ち兼良きアドバイザーだったりだ。
「試着してから買えよ?」
「うん! 両方着てみる」
私が見た目で気に入ったワンピースと、尚輝が薦めたワンピース。
「やっぱりこっちの方がいいかな――」