彼は、理想の tall man~first season~
「これ、持って行きなさい」
「――えっ!? これって」
その母から渡された物は――。
中身を見ずとも、外形と感触で分かってしまって、私は躊躇した。
「あっても困らないでしょう」
「いや、まあ、それはそうだけど」
「いいのよ、お父さんが渡すように言ったモノなんだから」
「え? でも――」
「早くバッグに仕舞いなさい」
「私、こういうつもりで帰って来た訳じゃないんだけど」
「分かってるわよ、でも、これは持って帰りなさいよ」
母に押し切られ、戸惑いながら仕舞った封筒。
「でも、尚輝にバレたら怒られちゃうよ」
「大丈夫よ、尚輝が車買った時も同じ額あげてるし」
「――え? そうなの?」
「うん、尚輝も渋ってなかなか受け取りはしなかったけど――あなた達2人は似てないようでそういう所は変に似てる」
「そうなのかな?」
「もっと頼ってくれてもいいのよ? お父さんのお陰で、金銭的に不便はないし」
「――うん」
「2人して、そういう所変に遠慮しぃなんだから」
ふふっと笑った母に釣られて、私も笑って曖昧に誤魔化した。