彼は、理想の tall man~first season~

頼れば楽は出来る――けど、やっぱりそれは、一社会人としては気が引ける。

2人して大学まで出して貰って好き勝手させて貰って。

親孝行らしいことなんて、何ひとつ出来ていないのに。


「お母さん、ありがと」

「それはお父さんに言ってあげて?」

「うん、それは勿論」

「体壊さない程度に、頑張るのよ?」

「うん」


突然母にギューッと抱きしめられて、懐かしい母の温もりにホッとした。

でも、別れの寂しさが募る。

そんな気持ちの中外に出ると、父がひとりエントランスポーチに立っていた。


「お父さん、色々ありがと」

「ん?」

「お母さんから受け取った」

「ああ――」


父は少し照れたように笑って、貯金が減ると不安だろう、と。

私が購入する時に、一番不安になったそれをズバリと言い当てた。


「自分で稼いだお金を貯めて自分の為に遣う――それでもまとまった額のお金を遣うって、凄く勇気がいっただろう?」

「うん」

「頑張ったご褒美だ、遣うなり貯金するなり好きにしたらいいよ。もう美紗のモノだからな」

「我慢してた分は、今日お父さんに色々買って貰ったから良かったのに――でも、本当にありがとう」
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