彼は、理想の tall man~first season~

父ともハグを交わして、車まで移動して――切なさが増す。


もっとゆっくり来れば良かったかな。

でも、明日はデート。

ただ、手を振って見送ってくれる両親を見ていると、何故私は家を出たんだろうって、当時の気持ちさえも解らなくなるくらい胸が締め付けられた。


「また、来るからね!」

「うん、気を付けてねぇ」


父は不定期に長期不在となり。

その留守を預かる母。

ひとりでこの家にいる時間は、一体なにを考えて過ごしているのか。

そんな状態になる母を置いて、父はどんな気持ちでフライトにたつのか――。


かといって、実家に戻るとか、今の私にはもう無理だし。

子育て終えた親には、これからの親の人生があるからって、前に尚輝は言っていたけど。


いや、違うか――私が単に寂しいだけか。

私と尚輝を自立させたことで、清々しているかもしれないし。

たまにこうして会うから、しみじみ思うんだろうし。

普段会えない分、会った時に親のありがたみが身に染みる。


「尚輝、あんたもう少しお母さん達と話しなさいよ」

「あ?」

「せっかく実家に帰って来たのにさ、」
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