彼は、理想の tall man~first season~
「美紗、俺運転するか?」
「え? なに、いきなり」
「昨日の今日で疲れてるだろ」
車に乗り込もうとしてきた尚輝は、助手席に乗るのかと思いきや運転席のドアを開け。
「ぶ、ぶつけないでよ?」
「素人じゃねぇんだから――でも、気を付けるよ」
私の機嫌を取ろうとしているのか――単なる親切心か――運転を代わってくれた。
土曜の夜の首都高って、微妙に混んでるから苦手なんだよね、なんて心の中で思いながら助手席に移動。
そして、帰路の途中、疲れてすっかり寝入ってしまった私は、
「美紗、さっきは機嫌悪かったなぁ」
「眠かったんだろ」
「はぁ? 子どもか?」
「本人には、眠いって自覚はなさそうだったけど、昨日納車で気ぃ張って、運転して。今日は今日で、親父乗せてショッピングだ。疲れた自覚症状は無しと思ってても、精神的な疲労は抱えてんだろ」
「おぉ~、さすが、兄貴」
「四半世紀も一緒にいれば、そりゃあな」
――男2人のそんな会話は知る由もなく、マンションに着くまで、グッスリだった。