彼は、理想の tall man~first season~
chapter.32
「こんにちは」
「体調は大丈夫?」
――頷いた私に、敦君は不思議そうに軽く首を傾げたけれど、黙って私はエントランスを抜けた。
日曜日の午後、私のマンション下まで迎えに来てくれた敦君と向かうは、私の愛車を停めている駐車場。
待ちわびていた、2人っきりでのドライブデートで。
天気は良好、気分も上々な感じだ。
智子に智子が好きな枇杷ゼリーをお土産に買って来たことをお昼前に電話で伝え、その時に敦君の話になって。
いよいよ今日が転換期な気もして、2人で秘策を練った。
「晃の実家と、美紗ちゃんの実家は近いの?」
敦君からの質問に、一旦敦君を見てから、私は2回頷き、肯定して見せた。
未だ不慣れだから、なにか言われても、私の喉の奥から、『うん』とは直ぐに返事は出ない。
『はい』しか口から出ないのならば、頷いて返すのもありなんじゃない?って、智子から言われて。
現在その秘策を実施中――。
ただ、相手の顔を見てから、頷いたりの反応はしないと、そのことの捉えられ方を誤解されかねないから。
それだけは気を付けるようにって、智子からは厳重なる注意を受けた。