彼は、理想の tall man~first season~
「運転お疲れさま」
「ごめんなさい、危なっかしい運転で」
そんなことないよ――なんて爽やかに放ちながら、シートベルトを外した敦君。
エンジンを停めて、私もシートベルトから解放された。
いそいそと車から下りて、湖が見渡せる場所に移動。
「うわぁ、予想以上に大きい」
「本当だ」
見えた景色に、私は感動で。
多分、敦君も同じだったのではなかろうかと、暫く言葉を発さずに見入っていた姿で、私はそう思った。
「県と都の硲に、こういう場所があったんだ・・・・・・」
「本当に、驚きだね」
ポツリポツリと会話を交わしながら、行く当てもなく湖の周りをゆっくりと散策。
それはとても穏やかな時間で、吹く風も心地良くて、日常の雑踏とはひと味違った空間で。
癒される――そんな場所に感じていた。
「海とは違うけど、やっぱり水辺はいいな」
敦君が湖に視線を向けて、私もそちらに視線を動かすと、丁度ボートに乗ってる親子が目に入った。
陽の光で、水面がキラキラと輝く中、お父さんがボートを漕いで、子どもが無邪気に笑う姿。
その情景だけでも、心がどこかほっこりする。