彼は、理想の tall man~first season~

「久々に、泳ぎてぇなー」


軽く伸びをしながらそう言った敦君の言葉に、思わず私は彼を見上げた。

今まで、ふたりの時に、そんな口調では言葉を吐かなかった敦君が。

まさかの“泳ぎてぇ”。


尚輝の前だったら言いそうな感じの言葉遣いだけど、と。

嫌悪感はないものの、どこか戸惑った。


でも、親しみを込めてのことなら、嬉しいかも――。


ちょっと立ち止まり、並んで湖を見て、風にあたっていた。


「もう少し歩く?」

ふいにかけられたその言葉。

見上げた顔は涼しげで、ナイスガイ。

改めてやっぱりかっこいいな、なんて思いながら頷くと、「はい」と、差し出された手――。

その手を見てから思わず見上げた私に、敦君はフッと笑った。

露骨に手を繋ごうと解るその行動に、気恥ずかしさが込み上げる。

こういうことに、ドキドキしていていい年齢なのか、どうなのか――。

でも、嫌でもドキドキしちゃうんだから仕方がない。


そっと手を出すと、キュッと繋がれた。


手を繋ぐのなんて、初めてでもないのに――脈が否応なしに早まる。

ゆっくり歩き始める敦君にくっついて、ドキドキしながら、私も歩き始めた。
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