彼は、理想の tall man~first season~
chapter.33
「それにしても、よく降られるね」
車内でほんのひと息ついた後、敦君から発せられたその言葉。
それは、季節的なものもあるんだろうけど、本当にそうだなと思って、私は同調するように、ふふっと笑っていた。
フロントガラスには、徐々に強まる雨が映る――。
それに比例して、雨音も大きなものになって行く。
幸い、素早い移動だったから、雨に濡れたというほどのことには至らずで、雨音を聴きながらホッとしていた。
いよいよ本降りになった雨。
「止むまで、動かない方がいいのかな・・・・・・」
不慣れな新車で、ゲリラ豪雨に挑む勇気はなくて、私の口からは、力ない言葉が漏れた。
「様子は見た方が良さそうな降り方だけど――」
洗濯物とか、大丈夫?
敦君にそう聞かれて、午前中にベランダに干して来た洗濯物を思い出した。
慌てて携帯を取り出して、尚輝に発信。
なかなか繋がらない電話にやきもきしていると、まさかの留守電。
一度切り、メールを打とうか、もう一度かけ直そうか考えていた時、尚輝から着信で、私は直ぐに通話ボタンを押した。
「っ、もしもし」
『ん? どうした?』