彼は、理想の tall man~first season~
尚輝に向けた言葉は、目の前に座っている尚輝から返って来たけれど、返しが可愛くない。
本気で言ってないって表情からは判るけど、なんか気分悪い。
おまけに晃が小馬鹿にするように笑ってる。
いつもの調子なんだろうけど、些細な言葉を流せる時と流せない時があって――なんだか今日は、流せなかった。
「分かった、もう心配しない」
抑揚のない声でそう言うと、同時に自分の表情筋がスッと下がった。
私の表情が、冷めた表情になったんだと思う。
尚輝が、しまった――みたいな顔をした。
でも、損なわれた気分は、簡単に元には戻らない。
一刻も早く尚輝を視界から消したくて、敦君と自分の食器を重ねてシンクへ下げた。
尚輝と晃が顔を見合わせて、私にチラリと視線を寄越したけれど、完無視。
それさえ気に障って、私はムカムカしながら自室に向かった。
敦君が居るけど、尚輝のお客になりつつあった状態だったから何も声は掛けなかった。
寧ろ私の彼氏なのに、尚輝のヤツ仕事を理由に占領してくれちゃって。
そもそも、その時点で気分は微妙だったのに。
私のイライラは、いつの間にかピークに達していた。