彼は、理想の tall man~first season~
その時、部屋の入り口に無造作に置いていたバッグが視界に入った。
ゆっくり一呼吸してから、そのバッグに手をのばした。
禁煙失敗しちゃうかも知れないな――。
誕生日に禁煙しようと思ってから、徐々に吸う本数を減らそうと思って、今日は煙草のことは考えないようにしていたのに。
これだけイライラしちゃうと、吸うという選択肢しかない。
バッグの中から煙草を出して、迷うことなく火を付けた。
煙に巻かれて、気分がいくらか落ち着く。
私の性格を判ってる尚輝と晃は多分暫くは、ほっといてくれるはず。
そう思うとちょっとホッとしたけど、今更敦君のことが気になった。
私の態度が敦君の目にどう映ったのか――なんて考えると、やってしまった感は否めない。
ただ、尚輝の言動と晃の笑い声が癪にに障ったんだから仕方ない。
煙草を消して、気を取り直し、部屋を少し片付けて、この際だからと、明日の準備に取りかかった。
明日着ていく服を決めようと、携帯で天気を確認。
曇りのち雨か――明日は車通勤しようかな。
そう思い立って、私はパソコンを立ち上げた。
その時、部屋のドアがノックされた。