彼は、理想の tall man~first season~
chapter.34*
「おい、美紗、やべえって! ちょっと来いよ!」
突然開かれた自室のドア。
デリカシーの欠片もない晃が、部屋の入り口で、興奮気味に声をあげていた。
ちょっと白い目で晃を見ると、
「中3の地区体決勝戦」
それだけ言って、部屋のドアを開けたまま去って行った。
「ちょっと見てみる?」
あ然としていた私に敦君が柔らかい声色で声を掛けてくれて、どうにか笑顔を取り戻すことが出来た。
ここは私も大人になるしかないと思い直して、敦君とリビングに向かうと、市民体育館の2階席のギャラリーからの映像が、テレビ画面に映っていた。
バスケコート内に整列して、これから試合みたいな雰囲気。
晃も尚輝も焼酎を飲んでいたので、私は敦君の分のグラスを用意して、テーブル席に座った。
焼酎の水割り。
因みに明日のことを考えて、自分の分は作らなかった。
ピッ!と、小気味良い音がテレビから聴こえ、いよいよ試合が始まった。
『あー、男バス勝てるかなぁー超勝って欲しぃ!』
テレビから、祈るような女の子の声が聴こえて来て、懐かしいその声に、私はこの映像を自分が撮った物だと思い出した。