彼は、理想の tall man~first season~
「じゃ、これから美紗の秘蔵映像を流しまーす」
「ヤメてって言っても無駄なんだろうけど、ヤメ「解ってんじゃん!」
止めてという前に、私が映っているっぽいテープをハンディカムに差し込み、カシャンと蓋を閉じてしまった。
そして、手早く再生を押すと、テレビには、ガヤガヤとした体育館の風景。
ステージを撮影している映像には、緞帳が下りた映像。
でも、機材をセットしている先輩達が、時折チラリと映っていた。
『まだ始まんねぇ?』
「尚輝、やっぱ見に来たか」
『丁度暇になったしな』
「おばさんは?」
『うちのクラス見てから、こっち来るって』
「やっぱ娘の晴れ舞台は観るよなー」
『暇人だしな』
「なに、お前、今日超ドライじゃね」
尚輝と晃の会話が、映像を通して流れてて、その周りにも何人か男子がいるみたいで、ギャハギャハと騒いでいる。
高校1年の時の文化祭。
仲良くなった先輩達がやっていたバンドの、私はキーボードを任されて。
この映像が撮影された日、私は初めてバンドというカテゴリーのステージに立ったんだ。
晃が撮ったのは、その時の映像で、今まで一度も見たことがなかった映像だ。