彼は、理想の tall man~first season~

「オイ、やばいぞ」

「――は?」

「隣り、マジで、あれはヤバいって」


さっきまで、こっちがヒヤヒヤするくらい堂々と口を開いていた小川が、戻ってくるなり小声になっていた。


「容姿は、最高にいい!」

「へぇ・・・・・・」

「お前、興味ねぇ顔して」


いい女好きの小川が、最高と言ったくらいだから、気にならない訳でもないが。

俺は明日の会議の方が、正直気になっていた。


今は、どこぞの知らない女よりも、明日の会議だろ。

明日は、勝ち取れるか取れないか――そんな瀬戸際の案件の最終戦略会議だ。


その前日に飲みに行こうなんて発想が、出たとこ勝負が代名詞の小川らしくもあるが――。


『あ、もうこんな時間? ねぇトモコ、そろそろ帰ろうよ。明日は1限から講義だしさ』

『はいよーっ!』


ってことは、女子大生か――。

男と別れても、特に感傷には浸らず。

飲んだからといって、特に流されず。


案外しっかりしたタイプか、単に淡白な性格なのか?

まぁ、俺の知ったこっちゃねぇけど。


ただ、そこまで考えていた自分にちょっと笑えた。

小川病に侵されつつあるのか――と。
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