彼は、理想の tall man~first season~
髪型だけは自由にアレンジ。
耳元には少し栄えるピアスをチョイス。
あれやこれやとわさわさ用意して、化粧もそれなりに施した。
「すみません、お待たせしました」
そう言いながらリビングに入ると、中條氏の姿はなくて。
「ゆっくりでよかったのに」
彼はベランダからひょっこり顔を出した。
またベランダにいたんだ。
そう思って近付くと、ジッと私を見てくる中條氏。
なにか変だったかな?
不安に思っていると――。
「アクティブ系じゃなくて、もっと冒険してくれても良かったのに」
中條氏からは、私の心情を全て見抜いているかのような発言。
だけど、そういうのもかわいいけどね――と、中條氏は頭上からサラッとそんな言葉を降らせた。
可愛いだなんて、2度目で照れてしまう。
それに、言われたことがないに等しい言葉だから、一応女の子な私の心を、甘くくすぐったくさせる。
本音じゃなくても、言われていい気しかしない。
大抵言われるのは、カッコいいとか美人とか、そんな言葉。
それも悪い気はしないけど。
私の中で『かわいい』って言葉は、特別な単語だ――。