彼は、理想の tall man~first season~
女の割には長身というコンプレックスが、『かわいい』という言葉に憧れを抱かせていたのも事実――。


「もう、出られる?」

「あ、はい」


ドキドキしながらも頷いた。

ただ、中條氏が同伴の外出というだけなのに。

相手が男であり、自分が女である事を、こんなに意識してしまうのは、何故なんだろう――。


「女の子に運転して貰うのは気が引けるから、尚輝には了解取ってあるんだよね。だから車のキー貸してもらっていい?」

「え? あ、はい」


玄関でそんなこんなを言われてしまい、私は気が動転してうっかりキーを渡してしまった。


「あれ、このキーリングって、国内未入荷品じゃない?」

「それは――父が海外で買って来てくれた物です」

「それも、そう?」


中條氏は私が手に持っているバッグに目配せをしてきた。


「フライトで日本から発つと、必ず何かしら買って来てくれるんです。でも尚輝には何買って来たらいいか分からないって言ってて、それで底ついて買って来たのがそのキーリングで」

「へぇ」


女物は買っても買い尽きることがないというのが、父の見解。

だけど男物はある程度使い古すまでは――。
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