彼は、理想の tall man~first season~
男にはバッグや小物入れは何種類も必要ないと思っている。
でも、だからと言って、尚輝にだけ何も買わないというのも、父親としては心苦しいようで。
家庭内事情を暴露すると、私と尚輝の持ってる小物類が、同じブランド品で統一されてたのはそれでなんだ、と――どこか納得していたようだった。
「でも、尚輝は尚輝でずるいんですよね」
「どこら辺が?」
「俺は毎回はいらないから、今度これ買って来てくれない? って、いつからか腕時計をねだってて」
「それは、賢いな」
「最近じゃ自分で買ったりしてますけど、未だにあれ欲しいんだよなアピールを実家に帰るとしてるんで、たちが悪いです」
尚輝らしいなと笑う中條氏は、尚輝の車を運転中。
私はお言葉に甘えさせてもらって、乗り慣れた助手席に座っていた。
父親はパイロットで、国際線の機長として未だ現役で空を飛んでいる。
仕事で家を空けることが度々あった父にとって、家長不在は心苦しいことだったのか――私と尚輝が中学生になると、ブランド品の何かを、お土産と称して買って来てくれた。
「女の子って目敏いし、それなりに嫉妬深いでしょう?」
「――はい」