彼は、理想の tall man~first season~
「学生の頃って中々そういう物って買えないから、結構妬まれたりして大変じゃなかった?」
「まぁ、多少は――ありましたかねぇ」
父がパイロット。
それだけで金持ちと言われて、尚輝も私もウンザリって時はあった。
確かに父は、普通のサラリーマンでは稼げないお給料をもらっているけど。
でも――人の命を一手に何百と預かる職業で、そこには私なんかが計り知れない重圧があって、簡単に金持ちって言葉で片付けて欲しくなかった。
本当は、高校は私立という選択があった――けど、尚輝の妙な反発心が、私立ではなく公立を選択させたんだ。
「友達に、いいなぁヴィトンの財布って言われて、パパが買ってくれたって言ったら、援助交際の噂が流れたりしました」
「アハハ、それ高校生の時?」
「いえ、中学です」
「え、中学生でヴィトンのお財布?」
「はい」
「俺の中学生ん時も、そういう子はやっぱ稀だったかも」
「私と尚輝、やっぱり変に持ち物マセしてたのかな」
お店までの道のりは、そんな話をしながらのドライブ。