彼は、理想の tall man~first season~

「取りあえず、必要最低限で、見積り出してみてよ」

俺と彼女の車――と、中條氏は話を先へと進めた。


中條氏の元チームメイトということは、松本さんは完全にお友達だ。

あまり言いたい放題も言えないかな――そう思っていると、松本さんが席を離れた。


少し待っている間ショールームから見える国道を眺めていた。

すると、「あ、そうだ」と。

中條氏が何かを思い出した感じで私に声を掛けて来た。


何かと思って中條氏を見ると、「買うとしたら、ローンは組むの?」そう聞いて来た。


「いえ、一括で買います」

「一括?」

「はい。尚輝がローンはだめだって。車欲しけりゃ一括で買えるだけのお金を貯めろって言ったんで」

「じゃ、もしかして、尚輝もあの車一括で買ったの?」

「はい」

「2人とも若いのに、しっかりしてるんだね」

「いえ――尚輝の車は、尚輝が学生の頃していたモデルの仕事で荒稼ぎしたお金で買った車なんですよ。まとまったお金が入った勢いで買った、みたいな」

「それでも、一括で買えるなんてやっぱり凄いと思うけど」

「そう、ですかね?」

「うん、その若さでなら、尚更立派なことだよ」
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