彼は、理想の tall man~first season~
中條氏は、カタログを捲りながら「大事に貯めたお金なら、納得の行く車を買わないとだね」と、まるで自分に言い聞かせるかのようにつぶやいた。

「貯金が減るのは、かなり不安ですけど」

「それなら、少しでも多く残るように、金額底値まで出させないとだな」

「すみません」

「ううん。納得出来ないようなら、構わず蹴ってもらっていいし。美紗ちゃんは、兎に角欲しい車を納得した金額で買うことだけに集中ね」

「本当に、色々とありがとうございます」

「言うのはただだから、ダメもとでね」


中條氏はちょっと悪そうな笑みを私に向けて来た。

尚輝も車を買う時、相当値切ってたけど、比じゃなさそうな、そんなニオイがぷんぷんだった。

なんだろう、今日は今日で楽しい。

昨日とは、また違った中條氏の一面を見ることが出来て、そういう風に思う自分に、どこか新鮮さを感じていた。
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