彼は、理想の tall man~first season~
「それで中條、美紗ちゃんのこと? そんなに気が早い奴だったかな」

ブツブツ言いながら、松本さんは持って来た用紙をトントンと綺麗に整えていた。


松本さんは、初対面にしてはとても話しやすい人だった。

中條氏という仲介者がいるからそうも思うんだろうけど。

それでも、話しやすい雰囲気を纏った人には違いなく。

松本さんを紹介してくれた中條氏に、私は心の中で感謝した。

フィーリング的に、自分と合うか合わないかは大事なことだ。

どうせ同じお金を払って車を買うなら、フィーリング的に自分に合うと思った人に売ってもらった方が、絶対いいに決まっている。

そんな風に思いながら、松本さんを見ていると――

「中條と一緒にここに来たってことは、今、彼氏はいないと思っていいんだよね?」

そんなことを聞かれた。


「はい…彼氏は、かなり長いこといないですかね」

「そうなの? なんで? あ、いや、なんでって事もないか」

野暮なこと聞いてごめんね――と、松本さんは苦笑い。

私は慌てて、気にしないで下さいと取り繕った。


でも、思い出してしまった最後の別れに、少しだけ気鬱になった。

ああいう別れを思い出すと、やっぱり別に彼氏とかはいいかなって、改めて思ったり。

でも――。
< 98 / 807 >

この作品をシェア

pagetop