君に咲く花
だってここがどこかもわかんない。お金だって持ってない。

だけど。

小道は続いているけど、そこを進むと門番のいるところに出てしまう。

だけど小道を通らないようにするには、この暗い森に入っていかなきゃならない。

もう出てきちゃったんだ。迷っててもしょうがない。

よしっと私は気合を入れて、真っ暗な森の中へと入っていった。

夜の森に入るのなんて、これが初めてだ。

暗くて、辺りが見渡せない。

落ち葉を踏む音が妙に大きく聞こえる。姿が見えないのに鳥や虫の声が聞こえてきて、そのたびについびくっとしてしまう。

はっきり言って、気味が悪い。

どのくらい、歩いたんだろう。

勢いで歩いてきちゃったけど、後ろを振り返ればそこはもう木が生えているだけで、他には何も見えない。

何だか急に、不安になってきた。

だいたいどうして、こんな目に遭わなきゃなんないの。

私、何か悪いことしたのかな。

我慢してた涙が溢れてきて、手で目を拭った私に、突然何かがぶつかってきた。

「きゃああっ」

思わず悲鳴を上げてしゃがみこんだ私に擦り寄ってきたのは、なんと重松だった。

「なんだ、重松かあ」

なんだか妙に気が抜けちゃって、私はその場にへたりこんでしまった。

重松はくうんと言って、顔を摺り寄せてくる。

もしかして、私が心細いのに気付いて心配してくれているんだろうか。

「ありがとう」

重松の頭を撫でながら、私はふと成政さんの言葉を思い出した。

成政さんは、重松はお姫様によく懐いてたって言ってた。

ていうことは。

「あなたも、私をお姫様と間違えてるの?」

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