君に咲く花
森を抜けるのに、三十分くらいは歩いた気がする。
それからまた少し歩いたところに、桔梗村があった。
たくさんの家が建っているけれど、どれも咲里家のお屋敷の五分の一よりも小さいような気がする。
畑仕事をしてる人もいれば、立ち話してる人もいる。
現代と違って、ここは何だか時間がゆっくり流れてるみたいに感じた。
辺りを見回しながら歩いているところへ、突然男の子が走りこんできて、前を歩く速水にどんっとぶつかった。
「帰ってきたな、速水様!」
この様子だと、男の子はわざと速水にぶつかったみたいだ。
なんて思ってた次の瞬間。
「とおっ!」
男の子が持ってた木刀を速水に向かって思いっきり振り下ろすもんだから、私は声もでないくらいに驚いてしまった。
だけど速水はといえば。
「おっと」
なんだか軽々と、男の子が振り下ろした木刀を素手で受け止めている。
「おいこら秀直(ひでなお)、危ないだろ」
「勝負しようよ、勝負!」
男の子は、速水といるのが嬉しくてはしゃいでるみたいだった。
なんだかかなり慕われてるみたいだ。
速水はしょうがないなって感じに笑って、ぽんっと男の子の頭に手をのせた。
「悪いな、ちょっと用事があるんだ。またあとで相手してやるから」
ちぇっと、男の子は残念そうに言って、それからにっと笑って私を指差した。
「このおねえちゃんとあいびき(現代ではデートと似た意味の言葉)か?」
「え?」
「ばっ」
あいびきって、なんのことだろ。この時代の言葉だろうか。
「お前はっ! どこでそんな言葉を覚えてくるんだ!」
「やーい、照れてやんのー」
そう言ってべえっと舌を出すと、男の子はそのまま走っていってしまった。
速水がそんなにうろたえるような意味の言葉だったんだろうか。
それも気になったけどその前に、子供にからかわれてうろたえてる速水が何だか面白くて、私はつい声を出して笑ってしまった。
「何がおかしいんだよ」
そう言って振り返った速水は、恥ずかしさを必死でこらえてるようなしかめっ面だった。
それからまた少し歩いたところに、桔梗村があった。
たくさんの家が建っているけれど、どれも咲里家のお屋敷の五分の一よりも小さいような気がする。
畑仕事をしてる人もいれば、立ち話してる人もいる。
現代と違って、ここは何だか時間がゆっくり流れてるみたいに感じた。
辺りを見回しながら歩いているところへ、突然男の子が走りこんできて、前を歩く速水にどんっとぶつかった。
「帰ってきたな、速水様!」
この様子だと、男の子はわざと速水にぶつかったみたいだ。
なんて思ってた次の瞬間。
「とおっ!」
男の子が持ってた木刀を速水に向かって思いっきり振り下ろすもんだから、私は声もでないくらいに驚いてしまった。
だけど速水はといえば。
「おっと」
なんだか軽々と、男の子が振り下ろした木刀を素手で受け止めている。
「おいこら秀直(ひでなお)、危ないだろ」
「勝負しようよ、勝負!」
男の子は、速水といるのが嬉しくてはしゃいでるみたいだった。
なんだかかなり慕われてるみたいだ。
速水はしょうがないなって感じに笑って、ぽんっと男の子の頭に手をのせた。
「悪いな、ちょっと用事があるんだ。またあとで相手してやるから」
ちぇっと、男の子は残念そうに言って、それからにっと笑って私を指差した。
「このおねえちゃんとあいびき(現代ではデートと似た意味の言葉)か?」
「え?」
「ばっ」
あいびきって、なんのことだろ。この時代の言葉だろうか。
「お前はっ! どこでそんな言葉を覚えてくるんだ!」
「やーい、照れてやんのー」
そう言ってべえっと舌を出すと、男の子はそのまま走っていってしまった。
速水がそんなにうろたえるような意味の言葉だったんだろうか。
それも気になったけどその前に、子供にからかわれてうろたえてる速水が何だか面白くて、私はつい声を出して笑ってしまった。
「何がおかしいんだよ」
そう言って振り返った速水は、恥ずかしさを必死でこらえてるようなしかめっ面だった。