届かない、空【BL】
その人と出会ったのは、入院していた病室でだった。
僕がベッドを囲うカーテンを1日中締め切っていたのに対して、隣のベッドを使っていた彼は『息苦しい』と言っていきなり開けてきた。
いくら文句を言っても、何度閉め直しても繰り返すもんだから、その内僕が諦めた。
窓からの太陽と部屋の灯り。
2つが合わさって、室内は大分明るくなった。
電気だけでも暗かったりしたんだろうか。
それなら少し悪い事をしたな、と思った。
いや、でもその時の病室で埋まっていたベッドは僕と彼の2人分だけで、他は空いていた。
だから反対側の窓からはちゃんと光が差し込んだはず。
……まあいいか。今更仕方がない。
僕と彼の間を遮る物が無くなって1日。
すると今度は話しかけてきた。
「空好きなの?」
何故、と尋ねると、ずっと見てるからと返ってきた。
「いいよね、空。俺は夜空も好きだなー。
人気の少ない山道とか走ってって、どっかに止めて見んの。
走ってる間につい空見上げちゃってさ、それでこのザマなんだけどね」
勝手に喋る彼は、どうやらバイクで単身事故を起こしたらしい。
足のギプスをほら、と見せてきた。