償いノ真夏─Lost Child─
嘘だ、と否定しようとして、真郷はとどまった。
──言えない。
夏哉のすがるような目を見て、それが真実なのだと感じた。
きっと『違う』だとか、『そんなはずはない』とか、そんな言葉を、夏哉も聞きたいのだ。
けれど、否定したところでどうにもならない。
あの女の顔は、祭りで見た美しい巫女の顔と重なってしまった。
それは恐ろしいことであり、知ってはならない禁忌だった。
夏哉は真郷が何も言わないのを察すると、ゆっくりと自身を落ち着かせるように息を吐いた。
「これじゃ、深見の婆さんも秘密にしろって言うはずだよな。……どうなってるのかさっぱりだ」
「どっちにしろ、俺達が関わっていい問題じゃ無さそうだ。大人はきっと隠したいに決まってるから」
「そうだな。──忘れよう、早く」
互いに言い聞かせるように、言葉を交わす。
それぞれ、違う思いを抱いたまま。