償いノ真夏─Lost Child─
ちらりと、隣で本を読んでいる小夜子を見れば、目線が合った。
彼女はふわりと柔らかく微笑んで、「どうしたの」と首を傾げた。
控えめな優しさで、いつも自分に気を遣ってくれる小夜子に、このまま嘘を吐き続けるのは、辛い。
夏哉にだって、本当は全てを打ち明けたい。
「小夜子はさ、隣町の高校行くんだっけ」
そう返せば、小夜子は頷いた。
「うん。家の事もあるし、あんまり遠くには行けないから」
「……そっか。俺にも手伝えることあったら、いつでも言って」
「ありがとう。真郷くんは、いつも優しいね」
嬉しそうに笑う小夜子を見て、チクリと胸が痛んだ。
優しくなんてない。
「そんなことないよ」
お決まりの台詞を吐けば、小夜子は少し悲しそうな顔をした。