償いノ真夏─Lost Child─
目蓋が重くなるが、ここで眠ったりしたら確実に風邪をひく。
真郷は思い立ったように立ち上がると、上着を羽織って自室を後にした。
この鬱陶しい気分をどうにかしたかった。
「真郷、出掛けるの?」
「うん。ちょっと出てくる」
すれ違い様に母にそう告げ、スニーカーに足を通すと家を飛び出した。
あの巫女の一件以来、祖母はまた沈黙を守っている。
真郷に対しての態度が軟化したという訳ではなく、いつもと変わらない。
それでも、真郷は以前より祖母が好きになった。警戒心がなくなった、と言った方が正しいかもしれないが。