償いノ真夏─Lost Child─


夏哉は何を言われたのか理解できず、真郷を凝視した。

「ちょっと待てよ!何だよそれ、今ごろになって……」

「ごめん。もっと早く言うべきだったよな」

「姉さんは知ってるのか?」

「ああ。もう伝えたよ」

「そっか……」

夏哉はそれ以上は何も言わず、真郷を責めもしなかった。

「真郷には真郷の事情があるんだろ。姉さんが納得してるならオレは何も言わない」

「夏哉……ごめん、ありがとう」

「別に。離れてたって、オレ達は変わらず親友だろ。──でもさ、ちょっと寂しいな」

「俺も同じ。夏哉は最高の親友だよ、これからも」


二人は拳を合わせると笑い合う。
もうすぐ離れなければならなくても、幸せだった。

今日がいつまでも続けば良いとさえ思えるほどに。

真郷、夏哉、小夜子──三人ずっと一緒だと、誰もが信じて疑わなかった。


< 164 / 298 >

この作品をシェア

pagetop