償いノ真夏─Lost Child─





桜吹雪の中、中等部の卒業式が行われた。


「卒業おめでとう、二人とも」


式が終わった後、卒業を迎えた真郷と小夜子の元に駆けつけた夏哉は、笑顔でそう言った。

その言葉を受けた二人は、同時に少し照れ臭そうに笑った。

「ありがとうな、今まで」

そう答えた真郷に、夏哉は眉尻を下げた。

「もう、すぐに行くのか?」

「うん。隣町まで行くバス、一本しかないからな。すぐ行かなくちゃ」

真郷は苦笑すると、荷物を肩に掛けた。

「あの、私お見送りに──」

言いかけた小夜子に、真郷は無言で首を振った。

「見送りには来なくていいよ。そんなことされたらバスの中で泣いてカッコ悪いだろ」

「──でもっ!」

言い募る小夜子に、真郷は一枚の封筒を差し出した。小夜子はそれを受け取ってから、堪えきれない涙を両手で隠した。


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