償いノ真夏─Lost Child─
*
桜吹雪の中、中等部の卒業式が行われた。
「卒業おめでとう、二人とも」
式が終わった後、卒業を迎えた真郷と小夜子の元に駆けつけた夏哉は、笑顔でそう言った。
その言葉を受けた二人は、同時に少し照れ臭そうに笑った。
「ありがとうな、今まで」
そう答えた真郷に、夏哉は眉尻を下げた。
「もう、すぐに行くのか?」
「うん。隣町まで行くバス、一本しかないからな。すぐ行かなくちゃ」
真郷は苦笑すると、荷物を肩に掛けた。
「あの、私お見送りに──」
言いかけた小夜子に、真郷は無言で首を振った。
「見送りには来なくていいよ。そんなことされたらバスの中で泣いてカッコ悪いだろ」
「──でもっ!」
言い募る小夜子に、真郷は一枚の封筒を差し出した。小夜子はそれを受け取ってから、堪えきれない涙を両手で隠した。