償いノ真夏─Lost Child─
「──挨拶してくるよ」
家の中に入り、祖母の部屋を訪ねる。
祖母はなんだか、少し安堵したような表情を浮かべていた。
「おばあちゃん、今日までお世話になりました。俺、深見の家に来れて──夜叉淵に来て、良かったよ」
深く頭を下げる真郷に、祖母は小さなため息をついた。
「……そうかい。真郷、私はね、本当はお前はこんな所に来るべきじゃなかったと思ってるんだ。もうこの村には戻ってくるな。お前は、東京で幸せにお暮らし」
「おばあちゃんは、ときどき難しいこと言うよね」
「そうさなぁ……でもお前は賢い。だから言うことを聞きなさい。いつまでも、私はお前を守ってはやれん」
祖母は真剣な目で、真郷を射抜いた。それでも、真郷は祖母に対して頷くことは出来なかった。