償いノ真夏─Lost Child─
小夜子は一人、何をするでもなく村の中を歩いた。
そして偶然、深見屋敷と呼ばれる豪邸の裏庭に、見慣れない少年がいるのを見つけた。
その少年は一人、縁側で絵を描いているようだった。
こちらには気付いていない。──というより、少年は何かを拒絶するように一心不乱にクレヨンを動かしている。
小夜子はそんな少年が、何だか気になって仕方がなくなった。
「ねぇ!」
声を掛けてみると、少年はびくりと肩を震わせてから、ゆっくりと顔を上げた。
少年と目が合った瞬間、胸が高鳴った。
「わぁ……」
子供ながらに、小夜子は少年を美しいと感じた。
村の子供達と違う日焼けしていない白い肌に、瞳の色より黒い髪。
大きな猫目は、何かに怯えるように小夜子を凝視している。