償いノ真夏─Lost Child─


手を差し伸べると、少年は今にも泣き出しそうに顔を歪ませた。


「うん……」


コクンと頷きながら何度か目を擦って、少年は顔を上げる。その時の少年の嬉しそうな笑顔を、小夜子はとても眩しく感じた。

少年の名前を呼ぼうとして、自己紹介がまだだったことに気付く。

「ね、おなまえは?」

「まさと……」

「まさとくん、わたし、さよこ」

「さよこちゃんは、どうしてぼくのこといじめないの?」

不意に“まさと”はじっと小夜子を見つめる。

小夜子は少々驚いたが、すぐに明るい口調で答えた。

「わたしのお母さんもね、まえは言われてたよ」

「え?」

「よそ者だって。だから、いつもはおとうとと二人であそんでるの」

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