償いノ真夏─Lost Child─
──それから間もないある日、いつも通りに学校へ行くと何やらクラスが騒がしい。
不思議に思いながら席に着いたところで、担任が慌ただしく教室に入ってきた。いつものように着席を促してから、彼は咳払いをした。
「今日は、皆に転校生を紹介する」
瞬間、静かだった教室が再びざわめき出す。
それに合わせて、小夜子の心臓もトクン、と脈打った。
「それじゃあ、──くん、入って」
まさか。まさかそんな……。
小夜子は雑踏に飲まれたその名前を聞いて驚愕する。
そして次の瞬間、教壇に立った転校生の姿に、さらに驚愕した。
目の醒めるような金髪、田舎者とはまるで違う白い肌の少年。その、恐らく母親似であろう端正な面立ちには、確かに見覚えがあった。
──忘れるはずがない。
小夜子は息を飲んだ。
かすかに幼い頃の面影を残したこの少年は、ガラス玉のように冷たい瞳をしていた。
「深見真郷です。もとは東京に住んでました。これから宜しくお願いします」
愛想が良いとは言えない簡潔な挨拶は、まるで他者を拒んでいるようだった。
〝深見真郷〟
その名前に、クラス中がどよめく。