償いノ真夏─Lost Child─


彼はそのまま頬杖をつくと、退屈そうに担任の話を聞いていた。

その横顔の凛とした美しさには、やはり見覚えがある。

けれど、先程からの反応を見るに、やはり他人の空似かもしれない。

そうでなくとも、自分のことを相手はとうに忘れてしまっている可能性だってある。

震える手のひらを握って、再びそちらに視線を移すと、あろうことか真郷と目が合った。

しまった。

そう後悔しながら、小夜子は何とかごまかそうと口を開いた。

「あの、私、朝霧小夜子です。よろしくね、深見くん」

咄嗟に自己紹介をしてしまった。笑ったつもりだが、うまく笑顔がつくれているか分からない。

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