償いノ真夏─Lost Child─
「──な」
ナツ、と言いかけて、止まる。
夏哉の向こう側には、渦中の転校生、深見真郷の姿が見えた。
近寄ることもできず離れたところから見ていると、なにやら言い争っているようだ。
夏哉は元々、短気な部分がある。止めなければ、と思い、近寄ると会話の内容が聞こえた。
「やっぱ都会の奴は自信過剰。──ムカつく」
その言葉に、思わず小夜子は夏哉の腕を掴んだ。夏哉は驚いた顔で小夜子を振り返る。
「朝霧さん?」
真郷はきょとんとして小夜子を見ていた。
「弟が失礼なこと言ってごめんなさい」
「弟さん?」
「うん、六年生。悪い子じゃないんだけどね、ちょっと難しくて」
小夜子が頭を下げると、夏哉は気に入らないようで眉を寄せた。
「俺は姉ちゃんのためを思って……」
「でも、目上の人にそんな乱暴な言葉使っちゃダメよ。ほら、ナツも謝って」
「……」
夏哉は小さく舌打ちした後、渋々といった感じで真郷に頭を下げた。