償いノ真夏─Lost Child─
「さっきはスンマセン。……朝霧夏哉です、オレの名前」
夏哉のふてぶてしい態度にも、真郷は動じることなく涼しげな顔をしていた。
「こちらこそ。俺は──」
「名前なら知ってます。深見真郷でしょ。でもオレ、まだアンタのこと認めた訳じゃないから。……じゃ」
真郷の言葉を遮ってそう言うと、夏哉はさっさとその場を離れてしまった。
その場には真郷と二人きり。話す機会は、クラスメイトのいない今しかない。
取り残された小夜子は、勇気を出して真郷に声をかけた。
「あ、あの……」
「なに?」
「夏哉が深見くんに突っ掛かるの、私のせいなの」
「朝霧さんの?」
「うん……深見くん、私がずっと探してた、思い出の男の子に似てるから」
恐らく、こんなことを言っている自分の顔は恥ずかしいほど真っ赤になっているだろう。小夜子は顔を手で隠しながら、真郷の表情をうかがった。
すると、彼は口元を手で隠して顔を反らした。金髪の間からチラリと覗いた耳が赤い。
その反応にドキリとする。小夜子が言葉を続けようと口を開いたところで、間が悪く予鈴が鳴った。
そうして、真郷からなんの回答も得ることなく、会話は終了してしまったのだった。