償いノ真夏─Lost Child─
小夜子は驚いて目を丸くする。
「──捨て犬?」
「たぶん。でも家には連れてけないじゃん。けど、ほっといたら死んじゃうだろ、こいつ」
夏哉は悔しそうにそう答えた。家に連れて帰れたら良いのに、と小夜子も思う。
しかし、それが出来ない理由が姉弟にはあった。
「どうしよう……」
どうにもならない。連れ帰ったところで、この仔犬が父にどう扱われるのか目に見えている。
相変わらず、夏哉は仔犬を抱いて俯いている。きっと小夜子と同じ気持ちなのだ。
「あのさ……その仔犬、俺に預けてくれないかな?」
沈黙を破ったのは真郷だった。
「あんたに?」
夏哉はまだ真郷をよく思っていないのか、少し喰ってかかかるような態度だ。
真郷はそんな夏哉を安心させるように微笑む。
「俺の家は深見屋敷って呼ばれてるくらいだから、そいつが大きくなっても心配ないし。……それに、だいぶ衰弱してるから早く暖めてやらないと危ないみたいだ」
その言葉に、夏哉は仔犬と真郷を交互に見つめた。そして、何かを確信したようにしっかりと真郷を見る。
「深見さん、コイツのこと、頼みます」