償いノ真夏─Lost Child─
巫女に選ばれるのは光栄なことだなどと言ったのは、一体誰だっただろうか。
未だ落ち着かない鼓動に、小夜子は目眩さえ感じた。
「真郷くん……」
しかし、得体の知れない高揚感も同時に感じた。
初めて真郷と御夜叉祭りへ行った時、舞台で舞う巫女の姿を見た彼の言葉を憶えていたからだ。
それは何気ない言葉だったのかもしれない。
『──綺麗だ』
確かに真郷はそう言った。あの時果たして、自分は嫉妬に顔を歪めずにいられたのだろうか。
「巫女になったら、喜んでくれる……?」
首元を押さえて、小夜子は小さく呟いた。