償いノ真夏─Lost Child─
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小夜子はあの日以来、悪夢に悩まされ続けていた。身体に大蛇が絡み付き、のたうち、凌辱される夢だ。そんな夢から覚めるとき、小夜子は必ず宙に向かって手を伸ばしていた。自分でも無意識に、助けを求めていたのだ。
「真郷くん……」
その名前を口にすれば、不思議と落ち着いた。同時に、自分の中に入り込んだ大蛇が静かになるような気がした。
小夜子はまだ、真郷を愛していた。
あの時、真郷は助けに来てはくれなかった。それでも、まだ彼を信じ続けていた。
「真郷くんは約束を破ったりしない……」
クマのぬいぐるみを抱きしめる。そうすると安心した。それだけが、真郷と小夜子を繋ぐ唯一だった。
実際、あの祭りの夜の出来事を忘れたわけではない。忘れようとしたところで、そんなことは不可能だ。この身体にはすでに覚えている。
他人から汚される屈辱も、同時に与えられる醜い快楽も。
小夜子を少女から女にしたのは、愛するひとではない。この世のものならざる、この地に根付く呪いだ。
ならばその呪いは、いずれこの村に返してやろう。
自分から愛する男を奪い、純潔を奪い、大切な弟にまで手を出した、憎い夜叉淵に。
小夜子は村人に変わらぬ笑顔を見せる一方で、淡々と彼等を呪っていた。